蜜蜂のドレッサー

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香水の書籍紹介:香りの愉しみ、匂いの秘密

香水の書籍紹介

2冊目は香りの愉しみ、匂いの秘密

ルカ・トゥリン著、2008年に河出書房新社より出版されています。

著者

香水を好きになった人は誰もが手に取ったことがあるだろう、『世界香水ガイド』*1の著者であり、『匂いの帝王』という呼び名で有名な化学者。

概要・感想

著者がルカ・トゥリン氏ということで手にしました。『世界香水ガイド』は以前所有していたけれど、沢山の香水を網羅する代わりに一つ一つに関する記述は少なく、手元にない香りの評価を読むのもどうだろうと思い手放しました。本書は内容紹介などを見ず手にしたため、実際に読みすすめてびっくり。『世界香水ガイド』は私的な評価と感じることがあったけれど、本書は人間が匂いをどのように感じているのか?匂いを感じるプロセスはどうなのか?といった生物学的な視点から解説していくという本。この段になって、著者のルカ・トゥリン氏は化学者だということ知りました。

前半は香料や香水博物館などの記述。一般的に受け入れやすい内容で、読みやすい。

後半では匂いを読みとる仕組みに迫っていくのですが、だんだん分子や原子の話になっていきました*2。よく耳にする〇〇香はどんな分子構造をしているのか、またその分子がなぜその香りと感じるのか?似たような形の分子と香りが違うのか。

一つの謎を解き明かすためには、これまでの先行研究の積み重ねやそこからくる閃きが大切なのだと感じました。本書を最後まで読むと、それまでの先行研究がパズルのピースのように嵌っていく感覚が得られます。(そうなるように書いているのだとは思いますが。)鼻で匂いを感じることが当たり前のようになっていて、なぜそんな香りを感じるのかは考えたこともなかったので、化学の世界に広がる謎の壮大さを感じました。

また、蛇足ですがネイチャー誌査読の仕組みや大学の研究ポスト、ソ連時代の本屋のお話等知り得ないことが色々読めるのも面白いポイントです。

*1:世界的に名香からニッチブランドまで幅広い香水を5段階でレビューした本。日本でも翻訳され原書房から出版されている

*2:高校1年生の生物で分子・原子に関する理解が止まっている人間としてはかなり理解が難しかった。教養というか、基礎知識が欲しいと思いいました。